IIA国際基準の考察(1312 ─ 外部評価)

本稿では、IIAの内部監査の専門職的実施の国際基準(以下、IIA国際基準)の考察を行っています。IIA国際基準は、アシュアランス業務とコンサルティング業務の両方を対象としていますが、本稿では主にアシュアランス業務を中心に考察を行っています。

基準1312の概要

基準1312は、内部監査の品質のアシュアランスと改善プログラム(以下、QAIP)における外部評価について定めています。

1312 ─ 外部評価
外部評価は、組織体外の適格にしてかつ独立した評価実施者または評価チームによって、最低でも5年に1度は実施されなければならない。内部監査部門長は、取締役会と以下の点について話し合わなければならない。
・外部評価の形式と頻度
・潜在的な利害の衝突を含めた、外部の評価実施者または評価チームの適格性と独立性

出所:IIA国際基準

外部評価の種類には、フル外部評価とSAIVの二種類があります。

フル外部評価

フル外部評価フル外部評価とは、外部のサービスプロバイダーによって行われることが一般的です。具体的には、例えば、監査法人、コンサルティングファーム、IIA(日本では日本内部監査協会)などが挙げられます。フル外部評価では、内部監査規程や内部監査マニュアル、個別監査の報告書や監査調書等を分析することで、基準と倫理綱要への適合性を評価します。日本国内の実務では、フル外部評価による実施が大半であると思います。

SAIV

SAIVは、内部監査部門の自己評価の結果を外部のサービスプロバイダーに評価してもらうことです。具体的には、例えば、まず内部監査部門が基準と倫理綱要への適合性評価を自己評価し、その結果を業務委託契約を締結した外部のサービスプロバイダーに検証してもらうという流れになります。但し、この方法は実務上、あまり多く採用されていないように思います。

実施頻度

実施頻度については、基準には最低でも5年に一度とされています。これは最低要件であり、品質評価を重視する組織では、もっと短期に、具体的には3年に一度という頻度で実施する例もあります。

取締役会との議論

内部監査部門長は、取締役会と外部評価の形式と頻度、及び、外部の評価実施者または評価チームの適格性と独立性を議論する必要があります。具体的には、例えば、年間の内部監査結果の報告のタイミングにおいて、内部評価の結果を報告する際に、次の外部評価はいつ、どのように行うか、誰に実施してもらうかといった点を話し合います。

外部評価の一般的な成果物

外部評価では、次を含めた報告書を入手することが一般的です。

①基準と倫理綱要への適合性の評価結果
②内部監査の高度化に向けた提言事項

出所:内部監査.info

一つ目は、内部監査部門がの基準と倫理綱要への適合性の評価結果についてです。評価は三段階(GC/PC/DNC*)で示されます。全体として適合しているのか、また、個別の規準単位ではどうなのかといった形で一覧されることが一般的です。

*GC:一般的に適合している、PC:部分的に適合している、DNC:適合していない

二つ目は、内部監査部門の高度化に向けた提言事項です。基準や倫理綱要に捕らわれることなく、有効性や効率性を高めるための提言を入手します。具体的には、例えば、リスクアセスメントの手法、オフサイトモニタリングの手法、データ分析の手法、人材育成の方法といった高度化提言が挙げられます。

これらは必須ではありませんが、内部監査の高度化を志向する内部監査部門では外部評価の主要な目的の一つとして位置づけることが多く見受けられます。

外部評価者の選び方

基準では、外部評価者の選定にあたり独立性・客観性を重視しています。既に外部評価者が親族や親しい友人であったり、内部監査部門に深い支援を提供しているサービスプロバイダーなどは、適切ではないとされています。現在、外部評価を提供している主要なサービスプロバイダーは、監査法人、コンサルティングファーム、IIA(日本では日本内部監査協会)などがあります。

監査法人

監査法人の良い点は、多数の多様な要員がいること、外部評価の提供実績が豊富であること、大規模な案件を受託可能であること、グローバル対応も柔軟に対応しやすいという特徴があります。

コンサルティングファーム

コンサルティングファームの良い点は、コンサルティング経験に基づいた実務的な解決策や実行支援に長けていること、グローバル対応力があること、会計監査を行っていないためどのような会社にも業務提供ができることなどが挙げられます。

IIA(日本では日本内部監査協会)

IIA(日本では日本内部監査協会)は、内部監査部門出身者が多く、実務家としての経験を踏まえた評価・アドバイスができること、コソーシングや高度化といった内部監査支援業務を行っていないため、独立性・客観性が確保しやすいこと、したがって基準や倫理綱要の原理・原則を踏まえた評価をしやすいことなどが挙げられます。

以上のようなサービスプロバイダーごとの特徴が挙げられますが、これらは一般論であり、実際の業務提供にあたっては、外部評価チーム及びメンバーに相当程度依存します。 したがって、選定段階で面談やメンバーの業務提供実績や相性などをよく吟味することが大切です。また、外部評価はあくまでも手段であり、その本質・目的は、内部監査部門の品質を継続的に確保・向上することにあります。内部監査部門長はこの目的を達成するために、様々な要素を考慮しながら、外部評価者を選定していくことが求められます。

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