IIA国際基準の考察(1110 ─ 組織上の独立性/)

本稿では、IIAの内部監査の専門職的実施の国際基準(以下、IIA国際基準)の考察を行っています。IIA国際基準は、アシュアランス業務とコンサルティング業務の両方を対象としていますが、本稿では主にアシュアランス業務を中心に考察を行っています。

基準1110の概要

基準1110は、内部監査部門が組織上独立するために、最高経営者(CEO)や取締役会(監査委員会含む)など一定以上の階層に直属することを求めています。さらに、年1回、独立性が確保されていることを取締役会に報告することを求めています。基準1111は、内部監査部門長 (CAE) が直接取締役会に伝達し、意思疎通を行うことを求めています。

1110 ─ 組織上の独立性
内部監査部門長は、内部監査部門がその責任を果たすことができるよう組織体内の一定以上の階 層にある者に直属しなければならない。内部監査部門長は、少なくとも年に1回、内部監査部門の 組織上の独立性の確保について、取締役会に報告しなければならない。

1111 ─ 取締役会との直接の意思疎通
内部監査部門長は、取締役会に対し直接伝達し、直接の意思疎通を図らなければならない。

出所:IIA国際基準

具体的に必要な対応

IIA国際基準への適合(GC:一般的な適合)に向けては、内部監査の独立性が確保されていることを自己評価し、報告することが必要です。具体的には、次のようなアプローチが挙げられます。

①内部評価(定期的自己評価)の実施
定期的自己評価の中で、基準1110について自己評価を行います。具体的には、内部監査のレポーティングライン(報告経路)について2つの経路が確保されていることや1110.A1にある妨害がなかったことを評価します。

出所:内部監査.info
②年間の監査結果報告書の作成
年1回、例えば第4四半期に内部監査部門として年間の監査結果報告書を作成する際に、定期的自己評価の結果を含め、内部監査の独立性が確保されていることを明記します。独立性についての個別ページを用意する方法も良いでしょうし、資料の一部にその旨を記載っする方法もあると思います。いずれにしても評価結果を明瞭に報告することが必要です。

出所:内部監査.info
③年間の監査結果報告書の提出・報告
年間の監査結果報告書の準備ができたら、内部監査部門長 (CAE) が取締役会に提出・報告します。日本企業ではこの報告が副社長やCFOなどから行われていることも見受けられます。一方で基準では内部監査部門長 (CAE) が自ら報告し、意思疎通することを求めています。これは内部監査を執行する担当役員として取締役会に対する説明責任を果たすという観点からそのようになっているものと考えられます。

出所:内部監査.info

解釈指針

それでは、次に、基準1110の解釈指針を見ていきましょう。解釈指針では、内部監査部門長 (CAE) が取締役会から職務上の指示を受け、報告を行うことで、組織上の独立性が確保されるとしています。具体的には次のようなものが挙げられます。

1.計画承認(内部監査規程、年間監査計画、予算等の監査資源)
2.報告受領(内部監査の業務実施結果)
3.人事承認(内部監査部門長 (CAE) の任命・罷免、報酬)
4.質問(監査範囲や監査資源の制約の有無等)

出所:IIA実施ガイドから内部監査.infoが抜粋・要約

日本企業では、取締役会でこれらの事項の一部を承認していないことも見受けられます。特に予算等の具体的な監査資源の承認や内部監査部門長 (CAE) の報酬承認は行われてはいないように思います。解釈指針は「内部監査は取締役会で方針を決め報告を受ける」という前提に立脚しています。日本企業の内部監査の多くはCEOに直属し日常的に指揮命令を受けることもあり「内部監査はCEOの目となり・耳となるためにある」と位置づけられることが多いと思います。この考え方を全否定されるものではありませんが、IIAではCEOに偏重していません。内部監査はCEOへのけん制を含めた会社全体のガバナンス機能を担う存在であり、従って取締役会を重視するということだと思います。

1110.A1

1110.A1は、内部監査部門が計画や報告にあたり妨害を受けた場合、内部監査部門長 (CAE) が取締役会にその事実を開示することを求めています。具体的には以下のようなケースが想定されます。

①年間監査計画の策定段階
(例)営業部門から特定事業所を監査の対象外にするよう圧力があった
(例)経営企画部門から経費削減を理由に海外監査をやめるよう圧力があった

出所:内部監査.info
②個別監査の実施段階
(例)資料提出や面談を不当に断られるなどの忌避があった
(例)発見事項の重要度を下げるよう圧力があった
(例)個別監査の報告書の内容を大幅に変更するよう圧力があった

出所:内部監査.info
③年間監査結果の報告段階
(例)年間を通じての総合意見を大幅に変更するよう圧力があった
(例)内部監査部門長 (CAE)による取締役会への報告を禁じられた

出所:内部監査.info
[post_footer]
内部監査.com

内部監査.com内部監査.com

記事一覧

内部監査の総合情報サイト テンプレート・ツール、ニュース、基準・ガイドライン、セミナー・研修、求人等の内部監査に役立つ情報を紹介!

http://xn--v6q806ccrkilz.com

関連記事

記事を読む

おすすめ記事 最近の記事
  1. 東芝ITサービス株式会社で架空取引

  2. NISC「重要インフラ専門調査会 第21回会合」

  3. 日本銀行「ビッグデータとAIのファイナンスへの利用 」

  4. 金融庁「記述情報の開示の充実に向けた研修会における説明資料」

  5. ISACA「Business Continuity–Pandemic Preparation」

  6. IIA国際基準の考察(1230 ─ 継続的な専門的能力の開発)

  7. 金融庁「疑わしい取引の参考事例(英語版)」

  8. 金融庁「銀行と電子決済等代行業者との間の契約締結等の状況について」

  9. 東京大学「日本企業における内部監査機能の強化に向けた政策提言」

  10. IIA国際基準の考察(基準1300/1310/1311 – 品質のアシュアランスと改善のプログラム)

  1. 第7回 品質評価

  2. 第6回 個別の内部監査(2)

  3. 株式会社ディーカレット:企業インタビュー

  4. 第5回 個別の内部監査(1)

  5. 第4回 年間内部監査計画

  6. 第3回 リスクアセスメント(2)

  7. 第2回 リスクアセスメント(1)

  8. 第1回 内部監査とステークホルダーの期待の整理

  9. 最終講(全6講)企業風土監査の薦め ~企業価値の向上と毀損防止・企業変革へ向けて~

  10. 最新の3線モデル(スリーラインズ・モデル)